実物主義の教育施設に‘バーチャル’を導入した理由とその活用方法とは(前編)
三機工業株式会社
執行役員 三機テクノセンター長 泉 和男様(中央)
三機テクノセンター副センター長 阿部 公雄様(左)
三機テクノセンターテクニカル研修室セーフティーグループ
技術エキスパート 田島 泰治様(右)
積木製作の主要サービス「安全体験VRトレーニング」の中で、重要な位置づけとなる建設現場向けの安全教育コンテンツ制作にあたってアドバイスを頂き、安全教育に対して真摯に取り組まれている三機工業株式会社様にお話を伺いました。
(※)安全教育VR「建設現場シリーズ」の3種のコンテンツは、清水建設株式会社様、戸田建設株式会社様、
三機工業株式会社様からアドバイスを頂き、2018年6月にリリースしました。
三機テクノセンターで大切にしている重要な考え方、「スパイラル法」と「実物主義」
▪本日はコンテンツを開発する上でアドバイスを頂いたお立場と、完成したコンテンツを実際に教育にご利用頂いているという両面からお話を伺いたいと思います。何卒よろしくお願い致します。
泉様:大前提として、テクノセンターで実施している教育のポリシーをご説明しておきます。ある教育の技法を入れています。スパイラル法といって何度も同じものを違う形で教育させ理解を深めていく、その様な技法を用いています。それはこの後詳しくご説明していきますが、現場を見て頂ければ理解して頂けると思います。もうひとつは実物主義です。実際の工具や足場、作業台等の設備を置いていますし、モックアップを多く置いて実際に触れる、見る事ができるように工夫しています。
バーチャルは「新たな切り口」可能性を感じた
▪VRを使用する以前の安全教育の取り組みについて。当時の課題や問題点についてお聞かせ下さい。
泉様:バーチャルという新しい技術がある中で、自分たちでほしいものを作ろうと思いました。古くから体感教育をスタートしていましたが、体感施設にはお金と場所が必要で、すべてを体験できる施設はできないんです。またスパイラル法をやるにしても受講生を飽きさせない繰り返し教育ができなかった。そんな中、バーチャルというのは切り口として非常に良いのではないかと考えました。
VRであれば、360度の視点と自ら行動し、探しに行く「目線」を育てる事ができる
▪VR導入の背景、理由についてお聞かせ下さい。
泉様:360度の視線が欲しいと考えていました。写真ではそれが実現できません。現場では近寄ったり後ろを向いたりしながら不安全個所を探します。自分から探しに行く目線を育てたいと思うと、実物しかなかったのが、VRではそれを解決できると考えました。そして教育のインパクトも必要でした。
またスパイラル法を実現する為に、職人さんを飽きさせないための切り口が必要でした。討議をしたり、体験したりといったものです。それにVRが加われば素晴らしいと考えました。
単なる災害体験だけでは終わらせない、拘り抜いたストーリー性のあるVRコンテンツ
▪今回のVRについて、拘った個所、特徴はどういった点でしょうか。
泉様:ストーリーに拘って作りました。単に体験だけで、怖かった、楽しかっただけというのは避けなければいけない。
また手順に沿って行うことの大切さを学べるようにしました。今回のコンテンツでは手順にそって作業を進めなければ転落等の労働災害の被災者となってしまいます。また点検ができるものとしました。簡単に言えば間違い探しです。手順も点検についても法律に則ったもので、非常に大切なものです。バーチャルだけではなく、テクノセンターでは模型や実物大のモックアップで同様に学べるように作っています。
▪アドバイスを頂いて完成した安全体感VRコンテンツ
▪VRのご活用状況、効果についてはどの様に感じておられますでしょうか。
泉様:2019年度は社内研修、外部の見学を含めて3179名が体験しました。2020年度はコロナの影響で、397名と1/10程度に減少しました。ただこのコロナの中で、63回実施できましたので、そう考えると大きな実績であると考えています。社外からの見学が多く、他社から非常にご興味を頂いています。また官庁からの見学希望が多く、多数来場されています。
▪テクノセンターの概要について、その中でどの様にVRが活用されおりますでしょうか。
田島様:この後現場をご案内しますが、VRの研修ひとつとってもその中でスパイラル教育を実施できるようにしています。可搬式作業台のコンテンツで言えば、4名を1グループとすると、最初に体験した人はうまくいきません。あとから体験する人がどんどんグループの仲間の体験を見ながら学習し、高得点をとれるようになります。
泉様:要は1回で人数分の教育ができるという事ですね。自分のVR体験で1回。他のグループの人が体験している様子を見ながら、繰り返し教育ができる様にしています。
▪VRを活用して分かった事、気づいた事はどのような事でしょうか。
泉様:想定していたよりも好評で、楽しんで受講してもらえるという事が分かりました。良くない事もあり、それがVR酔いです。バランスが取れなくなり倒れてしまう方もいるので、注意して教育を実施しています。
今後に期待する事は「新しさ」と「五感」に訴えるバーチャル体験
▪今後のVRの展開について、期待する事をお聞かせ下さい。
泉様:VRはやはり360度の視点と、自分で歩き回り、探す事ができる事が利点だと思います。ですので、手順を守る、点検をするという事をもっとつきつめて体験できるようにしていきたいと考えています。
阿部様:とにかく飽きさせないという事を考えています。安全教育の施設も既に第二ステージという事で新たなエリアを新設しています。そこでもテクノロジーを使用した仕掛けを考えたいですね。
▪今後のVRに求める事、あれば良いと思う機能、課題は挙げるとするとどういったものでしょうか。
泉様:VRは360度の視点という点では非常に良いのですが、視覚だけでは無い効果を期待したいですね。感電や痛みを伴ったり、そういったものを組み合わせたものが欲しいですね。
田島様:バーチャルは非常に好評です。それだけにもっと発展できればありがたいです。我々は何度も同じ内容を切り口を変えて教育をしています。切り口を変えるという意味では今導入している足場、可搬式作業台とは違ったシナリオを作っていきたいと思っています。
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