リアルの課題をバーチャルで解決!
OJT教育で抱えていた課題
従来は「現場で学ぶ」が基本
従来はOJTにより現場にて学ぶことが一般的でした。現場で配筋を確認する、現物を見て学ぶという事が当たり前でした。昨今、鉄筋コンクリート造より鉄骨造の建物比率が増えてきたこと、躯体のPCa化が進んできたこと、工事の大型化に伴い、RC躯体の施工管理を経験する機会が減ってきたことがなどから、OJTで鉄筋工事を学ぶことが非常に少なくなってきています。そういった環境下でもRC工事の不具合を起こさないためにも、鉄筋配置の不具合防止など管理技術の伝承を目的として、実物大モックアップ体験型研修を行っています(大阪・東京にて)。鉄筋工事においては、一般的な構造図ではすべての鉄筋の配置を表すことは難しく、細かい仕様は標準配筋図を参照します。そのため、施工管理の基本として、標準配筋図を頭に入れる必要があるとともに、工事現場を見て不具合箇所に気づく感性が必要となります。これらを身につけるために、モックアップを活用し、鉄筋配置の不具合箇所を探す体験型研修を実施しています。
現場OJT教育の課題とは
この研修は、体感度は高いものの不具合箇所が固定されているため、同じ受講者が繰り返し受講するには不向きです。定期的にモックアップを作り替えるにも時間を含めたコストの問題があります。また研修施設には新幹線、在来線を乗り継ぎ、かなりの時間をかけて赴く必要があり、全国から受講者を集める時間的コストも膨大になります。
VR教育の開発へ
現場研修の課題を解決するべく、2014年頃からヘッドマウント型VR機器の活用について調査を始め(当時はOculus Rift デベロップメントエディション)、当初はお客様にBIM(建物3Dモデル)を利用したプレゼンテーションをVR機器で行うなどに活用しておりました。VR機器には将来性を感じ、更なる活用を検討し始め、教育に活用できないかというところに行きつきました。当時はチャレンジ的な意味合いもあり、開発を行うこととしました。
またVRを使用することで、場所を選ばず手軽に工事現場さながらの環境で教育を実施することができ、また、素材としてBIMデータを活用することができることから、さまざまな教育ツールを(実物大のものを作るより)比較的容易に作成することが可能なことから開発に着手しました。
VRでしかできない事を教育に
VRを開発して体験して初めて気づく事がたくさんありました。
例えば、多様な視点から鉄筋を確認する事ができる事が新鮮でした。実際の現場であれば、梁やスラブの中、下からの視点で確認する事はできません。検査も何とか手を伸ばしてやっているのが現状です。VRであれば視点が自由になり、どんな場所でも簡単に入り込めるので、いつもと違った視点から学習する事ができます。
計測も本来であれば二人がかりで実施する事が多いのですが、VRであれば簡単に計測する事ができます。ゲーム感覚で体験する事ができるので、教育に取り組む若手社員のモチベーションの向上に寄与できるのではないかと感じています。
3次元モデルのメリット
BIMデータを元に3D技術を活用してVRは作られています。普段よく見ている2次元の図面を確認しても、よくわからない部分が、3次元的な視点で見る事によって非常に理解が深まります。
正誤モデルの切り替えも教育に大いに役立つと考えています。不具合のあるモデルと正しいモデルをその場で瞬時に切り替える事によって、どこに間違いがあるのか、どうすれば正しいのかが理解できるようになります。研修施設でも間違いのある状態と正しい状態、2種のモックアップを作って確認していますが、その場で瞬時に切り替えができるVRの利点が大きいように思います。
支店・現場単位での研修の実現
鉄筋の表現やテクスチャの精度の高さもあり、非常に臨場感が高く、没入感のあるVRシステムに仕上がりました。
現在は各支店、現場単位での研修に使用しており、体験者のほとんどが、想像以上の高い評価をしています。操作UIも優れており、受講者がすぐに使い方に慣れる事ができ、計測ツールや図面を本物の様に利用、確認ができています。受講者が楽しみながら学習ができる要素を多く含んでいると考えています。
以前はPCタイプのVRゴーグルを使用していましたが、現在はスタンドアロンタイプとなり、各拠点単位で手軽に体験できるものになりました。
【VRielが可能にする学習内容】
鉄筋の基礎から、よくある不具合の確認
2次元情報では学ぶ事ができない「見て学ぶ」「触ったような」感覚の実感
通常は入れない鉄筋の中や柱、スラブの中からといった新しい視点からの確認
現実ではできない正誤モデルの切替えによる直感的な理解