大阪ガスビルディング×点群×
メタバース
大阪ガスビルディングは安井武雄の設計で1933 年に竣工(南館)。
国の登録有形文化財にも登録されている大阪御堂筋を象徴する建築物です。
今回、大阪ガス都市開発様からのご依頼で、
クモノスコーポレーション株式会社様計測の点群データを活用し、
積木製作で3DCG 化したメタバース空間内コミュニケーションツールを開発しました。
クモノスコーポレーション株式会社
空間ソリューション事業部
営業部 マーケティング課 主事
永坂 晴瑠様
大阪ガス都市開発株式会社
技術本部 第1技術部
建築グループ 主任
能登 俊平様
御堂筋の象徴として
点群計測を実施しようと思ったきっかけは何でしょうか?
能登様まず前提として大阪ガスビルは、御堂筋にある建物としては象徴的なものとなっており、大阪の人たちには認知して頂いている建物になります。
点群撮影を実施したきっかけとして、WIREDという雑誌が好きでよく読んでおり、「ミラーワールド」の特集を目にした事が大きく関係しています。こういう世界があるんだなと感心したのですが、同時期に旧都城市民会館のデジタルアーカイブの話をイベントで聞く機会がありました。これを大阪ガスビルでもできないか、デジタルアーカイブとして点群撮影をし、維持管理等に使えないものかと考えたのがきっかけになります。
デジタルアーカイブとして点群計測を実施
クモノスコーポレーションに依頼した理由をお聞かせください。
能登様以前社内で、ドローンを使用して、何かできないかという話しがあり、建物の外壁タイルの点検、調査を実施した事があります。そのドローンの会社の方に相談したところ、クモノスコーポレーション様を紹介頂き、依頼させて頂く事となりました。点群計測を実施したのが、2020年の2月頃になります。依頼前にクモノスコーポレーション様について調べてみると実は15年前に一度大阪ガスビルを計測頂いているという事が分かりました。当時は改修工事をして頂いた施工会社からクモノスコーポレーション様に計測依頼があり、計測頂いていた様です。一度計測されたご経験もあり、社内でもスムーズに承認されました。
永坂様15年前の計測は私が入社前の出来事ですが、当時の機材からかなり進化しており、スキャンスピード、精度が格段に上がっています。歴史的建造物をデジタルアーカイブとして、年代を変えて取り続けていくという事は遺産継承の意味でも意義があるのではないかと思っています。能登様からの熱いご要望もあり、地上レベルだけではなく屋上庭園や近隣ビルの屋上から許可を取って頂き計測する事で、建物全てを網羅した点群データを取得する事ができました。今回は過年度の改修工事目的ではなく、デジタルアーカイブとしての撮影でしたので、非常に新しい取り組みとしてチャレンジさせて頂きましたし、これをきっかに新しい事業として成り立っていくのではないかと感じています。
「コミュニケーション」は欠かせない要素だった
マルチプレイVRの開発に至った経緯はどのようなものだったのでしょうか?
能登様もちろん点群の活用として今後の維持管理、工事に活用していくという考えはあります。ただ我々の会社は不動産ディベロッパーですので、維持管理や工事以外の活用方法も模索していく必要があると感じていました。我々は不動産、建築を通じて人が集まる場所を創っています。それと同じ様に、バーチャル空間でも人が集まる空間を作るためには「コミュニケーション」をとるという機能は欠かせないのではないかと感じました。
もちろんこのコロナの状況もあり、世の中がDXの必要性を感じている中、社内でもこのようなツールの必要性を多くの人が感じていたので、比較的理解を得るのもスムーズに進みました。
またコロナがちょうど広がりだした時期に、「密です」というゲームが話題になっているのを見てこのようなものを作る事ができるのではないか?と考えました。永坂様に相談したところ、高い品質で実現できそうな会社があるというお話を頂きました。それが積木製作様でした。
永坂様クオリティの高いものを普段から積木製作様には制作して頂いていたので、紹介させて頂きました。
能登様達とブレストした際に「大阪ガスビルを見ながら会議がしたい」と仰られたので、前面道路、周辺建物を含め制作しようというお話しになりました。大阪ガスの社員様も普段は忙しくてそれほど気にしておられないかもしれませんが、このビルの歴史的な素晴らしさに気づいて頂ける様なものになれば嬉しく思っています。
マルチプレイVRの魅力とは
VRを体験した感想をお聞かせください
能登様まず一人でVRを体験して思ったのが、VRのクオリティの高さです。本当に驚きました。その後マルチプレイを体験したのですが、一人で体験するバーチャル空間とはまるで違う感覚がありました。一人で体験するバーチャル空間は、ただ見て回るだけになってしまい、ついディテールばかりに目が行きがちで、空間全体を楽しむといった感覚は少なかったように思います。マルチプレイであれば、雑談などの会話をしながら、ともに散歩をしたり、同じ視点に立って大阪ガスビルを眺めたりできるため、より空間全体を楽しむことができたような気がします。私は、御堂筋をぶらぶらと散歩するのが、好きなのですが、マルチプレイではそれに近い感覚があったように思います。
点群の活用方法が変化している
今後の点群、VRの活用についてお聞かせください
永坂様点群計測の立場としては点群の活用方法が変わってきていると感じています。図面作成の為の背景的存在からDXの活用の主役へと発展していると思っています。なぜそこで点群データを使われているかというとより現実に近いものを人が求めている。よりリアリティを追求できるものが点群データだと感じています。デバイスが進化すればもっと別の活用方法が出てくると思いますし、今回の取り組みでそのきっかけを作る事ができたのではないかと感じていて非常に嬉しく思います。
御堂筋のコミュニティを創造する様なものになりたい
能登様今回の取り組みで、点群をベースにしたバーチャル空間を高いクオリティで開発する事ができるという事、また同時に入る人を増やすなど拡張性についても理解はできました。ただそれだけでは多くの人に継続して使ってもらえるものにはならないと思います。どういうものになるかは分かりませんが、御堂筋を表現しているバーチャル空間としては一番使ってもらえるものになりたいなと考えています。御堂筋には大企業が多く存在していますが、隣通しの会社でコミュニケーションがある訳ではありません。そういった企業や人たちを繋げるコニュニティになるようなものになればと思います。また御堂筋は再開発や歩道化などが行われ今後どんどん変わっていく為、少し未来の御堂筋を表現できるようなバーチャル空間としても面白いと考えています。